日本画の杜 第十九章 「雪の季節」 2018・2

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午後から「雪」の予報。雪の降る前 空は柔らかく澄んで ふんわりとする。ほんの一瞬の美。

 

 

 

 

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              雪雲が近付いている

 

 

 

 

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氷柱のある窓辺 雪の降る季節 真っ白な光に包まれた 音の無い 大きな繭になる。

 

 

 

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                  繭の中で私は昨年の素描を見直す。   

 

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昔 加山先生がこの頃の学生は写真を見て描くようになったから教えることがないと嘆いていらした。「受験以来スケッチはしてないと言われると なんかこの子に日本画教える気にならなくなる」

 

スケッチ又は 素描。見る事である。普段見ているものを 描くために見る事である。

絵を描く事は 見る事なのだ。絵は素描に始まり素描に終わる。

 

写真を見て絵を描くことが悪いとは言わない。しかし 写真を見て描く事はダントツにお手軽な方法だ。写真というのは三次元のものを 既に二次元にしてある 謂わば既に平面となったものではないか。実物を見て描くことは 自らの眼と手と心と感性と美意識をもって 三次元のモチーフを二次元に移し替えることであり これにはかなり高度な知性を要する。平面となった写真を写す事が如何に容易かということだ。

 

私は容易にできてしまう事を選ぶ気にならない。そういったことには喜びが無いからである。私は深い喜びを得るために生きている。楽しいこととは違う 生きる喜びである。

 

加山先生は写真を多用した作家である。マニアックなアルチザンであった先生はアトリエの隣りに暗室を設け カメラは何台持っていらしたか分からない。御玄関へ出てこられる先生は しばしば定着液のにおいがした。ご自分で撮った写真を焼いて 作品に使っていらした。しかし 先生は膨大な数の素描をなさっている。裸婦だけでも楽々二千枚は超えるだろう。飽くことなくスケッチした花 虫 猫 風景等々。先生は明確なコンセプトを持って 敢えて写真を使っていらした。 

 

 

 

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私は写真は使わない。それは私の絵に対する考え方による。私は見るのが好きなのだ。

見たものを写し 創って行く時の緊迫したやりとりに 他には替えがたい喜びを感じる

自分の持っている能力を全て結集しても 到底かなわないものを要求される。これ程嬉しい事があろうか。

 

 

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今度こそもっと良いのを描こう。挑戦し続けては自分の力量不足を痛感する事が嬉しい。自分の人生は今この程度なのかと思う。これから先 何処までいけるのか。

 

 

 

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いくら言葉を尽くしても表現できない自分の芯の部分。このもどかしい 空虚さが 描くことでのみ解消され満たされる。

 

 

 

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  庭に出ると どこからか花の香がする。春は近い。

 

 

 

 

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