日本画の杜 第十六章 「野田村へ」 2017・10

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秋になった。十月の始め 空気が冷たくなって夜の森から冬の匂いがした。今年の秋はとても寒い。寒いけれど 懐かしい冬の匂いは私の心に暖かい火を灯す。幼友達に出会ったように心躍る。季節外れの台風が去った後 富士山に初雪が降った。月末には木枯らしが吹いた。落葉の降る音で目が覚める。舞い落ちる枯葉を歩くと どんな考えも浮かばなくなる。全ての思考は自然が持ち去ってしまう。

 

この時季はとりわけ雲が美しい。間断なく形を変え そのどれもが綺麗に整っていることに自然のすごさを感じる。

 

 

 

 

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秋晴れの日 前本は岩手県九戸の「野田村」へ旅した。親しい友人を訪ねた昨年の旅で出会った「鵜の巣断崖」から見える海の美しさが忘れられず 今年はスケッチの目的で旅に出た。

 

 

 

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            鵜の巣の海の神秘に言葉は要らない。

 

 

 

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             前本は三日間 こうしてスケッチした。

 

 

 

 

              野田村は誠に美しい処である。

 

 

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                閑 待 月

            ( シズカニ ツキヲ マツ ) 

  

   『 月ならで さし入る影の なきままに 暮るるうれしき 秋の山里 』

         

山家集に収められた 西行の歌である。月以外には秋の山里の庵をたずねるものもないので 月の光がさし入るだろうと 日の暮れるのがうれしく思われることよと歌っている。西行平安時代歌人で 武家の出であるが戦乱の世を儚んで二十四歳で出家した

各地を行脚して歌を読んでいる。野田村にも庵を編んで逗留したと言われている。

 

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                    西行の庵跡

 

前本は西行の歌に心惹かれ 以前から山家集を座右の書としてきた。西行も見たであろう海を描ける幸せを思ったことだろう。前本の好きな歌を記しておこう。

 

   『幻の夢をうつつに見る人はめをあはせでや夜をあかすらむ』

 

   『波のうつ音をつづみにまがふれば入り日の影のうちてゆらるる』

 

   『花と見えて風にをられてちる波のさくら貝をばよするなりけり』

 

           『まどひきてさとりうべくもなかりつる心を知るは心なりけり』

 

 

          

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               佳き秋であった

 

 

 

 

 

                  🌊