2018-01-01から1年間の記事一覧

第二十八章 「静日」 2018・12・25

「静日」 91.0×72.7 前本の作品集は貸出中である為 今回は私の作品である。残り僅かとなった2018年は戌年である。私は人間の友達より 犬の友達の方がはるかに多い。この絵のチャイという犬とは格別長い付き合いであった。私の人生のなかでも一番波乱に満ちた…

第二十七章 「普賢菩薩」

「普賢菩薩」(47×47) 多忙極まる日々が続き 二ヶ月以上ブログを書くことが出来なかった。季節は晩秋から初冬になった。夏も好きだが 初冬は格別だ。私は コートを来て外に出るのが大好きだ。それは オーヴァーコートと言っていたコートでなくてはならない…

第二十六章 「猫と牡丹」 2018・9

「猫と牡丹」20号 暑かった今年の夏はあっけなく終わった。九月に入ると雨ばかりで気温も低くなり 台風が来ては去り又来ては去り 十五夜も雨だった。富士山の初冠雪は昨年より27日も早く ストーブを点ける日が多くなった。 今の時期に猫と牡丹でもないのだが…

第二十五章 2018・8 「秋野」

10号変 「秋野」 八月も終わりに近づいた。例年ならお盆を過ぎると朝晩の気温が下がり 秋が始まる。短い夏が終わったと寂しく思うのだが 今年はまだ夏である。このブログを書き上げるのは九月になるだろうから 夏の百合と秋草が描かれた前本の作品を冒頭に掲…

第二十四章 「沙羅」 2018・7

円窓「沙羅」 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす 沙羅 夏椿とも言う。何故か心惹かれるこの花が咲いて 夏が来た事を知る。小さな花で あっさりと散ってしまう。平家物語の冒頭の一節に相応しい趣き深い 静かな木…

第二十三章 「薔薇」 2018・6

「薔薇」 4号 沢山の蕾が見え始めた。私の薔薇は一年に一度しか咲かない。四季咲きはここでは育たない。年に三度程咲くイングリッシュローズも一度しか咲かない。それが自然というものではないのか。それで充分なのだ。人間は 何とか一年中薔薇を飾りたいと…

日本画の杜 第二十二章 「黒猫」

前本利彦 「黒猫」12号 五月に入り 森は緑に変った。冬枯れの木立に小さな芽が吹いているのを見つけた。 それから三日で樹々は新しい緑に覆われ 森は萌え立つ。目を見張るばかりの自然の妙である。山躑躅が咲いた。山吹も咲いた。夏のような日があったり 長…

日本画の杜 第二十一章 「誘蝶花」

誘蝶花 四月になった。小雪が降ったり 初夏のように暑かったり 目まぐるしく変わる陽気とともに春が来た。今は四月の半ばであるが この森の桜は満開で 梅も満開で 窓の外は賑やかになった。キビタキやアカゲラが朝の食事にやって来る。鶯は四月三日に啼いた…

日本画の杜 第二十章 「八千草屏風」 2018・3

「八千草屏風」四曲一双 部分 箱根芦ノ湖「成川美術館」が開館三十周年を迎えた。館主の成川さんとも三十年来お付き合いをさせて頂いた事になる。本当に長い間 お世話になった。成川美術館に収蔵されている前本の作品は百点以上になるだろう。 始めて成川さ…

日本画の杜 第十九章 「雪の季節」 2018・2

午後から「雪」の予報。雪の降る前 空は柔らかく澄んで ふんわりとする。ほんの一瞬の美。 雪雲が近付いている 氷柱のある窓辺 雪の降る季節 真っ白な光に包まれた 音の無い 大きな繭になる。 繭の中で私は昨年の素描を見直す。 昔 加山先生がこの頃の学生は…

第十八章 「前本利彦の人物画 No.2 」 2018.1

新年の八ヶ岳は例年より遥かに寒かった。よく晴れた日は寒さが一段と厳しい。スカートしか持っていない私がついにズボンで過ごさなくては居られなくなった。不本意極まりないが背に腹は代えられぬ。どなたにもご覧にいれたくない姿で新しい年を迎えた。 猫の…