日本画の杜 第二十一章 「誘蝶花」

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                                   誘蝶花

 

 

 

四月になった。小雪が降ったり 初夏のように暑かったり 目まぐるしく変わる陽気とともに春が来た。今は四月の半ばであるが この森の桜は満開で 梅も満開で 窓の外は賑やかになった。キビタキアカゲラが朝の食事にやって来る。鶯は四月三日に啼いた。

 

朝夕は花冷えで ストーブをしまうことは出来ない。相変わらず冬と同じモコモコセーターを着ている。

 

古来より 梅が咲き出してから山吹が散るまでを春と言った。山吹の蕾はまだ固い。ここでは暫く春が続く。

 

 

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山には小さな花の咲く桜があちこちに自生している。淡い色の細かい花が 下を向いて咲く。何とも言えない風情である。愛犬と共に歩く山道で 私はこの上なく美しい自然にひれ伏すのである。

 

 

 

 

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夕暮れの空は 好きな光景の一つである。私が幼い頃 昭和二十年代の武蔵野はこんな風だった。懐かしい夕暮れ。日本がしみじみとした空気に包まれていた頃。ここにはそれが残っている。ここへ来てもうすぐ七年になる。そして私達は ここで七十歳になるだろう。随分長く生きた気がする。

 

過ぎた事を思い出すのは好きではない。沢山の出来事 沢山の幸せ 沢山の不幸それら全てが今の私を形作っている。それで充分である。

運命の流れのままに生きてきた。こうなりたい こうしたい と思ったところで無駄であろう。一貫した主義主張を持って その時遭遇した現実に一生懸命取り組めば 良い流れに乗ることができる。出来れば清流に流されたい。

 

流れに逆らわず 植物のように 争わずに生きてゆきたい。果敢に闘うべき相手は自分だけなのだ。

 

 

 

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       庭に訪ねて来る小鳥たちと仲良く暮らしたい。小鳥は本当に

       可愛い。

 

 

 

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              都会が遠く感じられる。

 

 

 

 

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                                 二年前 実相寺の境内で桜売りから買った小さな

         苗が花を付けた。見上げるほどに大きくなってね。

 

 

 

                                  前本ゆふ

      

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